メディアに取材される店の共通点|記者が思わず取り上げたくなる店の作り方
「なぜ、あの店ばかりテレビや雑誌に取り上げられるのだろう」
そう思ったことはありませんか。自分の店のほうが味も良いし、サービスも丁寧なのに、なぜか取材されるのはいつも別の店。
この差は「運」や「コネ」ではありません。取材される店には、共通する「設計」があるのです。
本記事では、メディアに選ばれる店の構造をロジックで分解し、何を整え、何を発信し、どの順番で仕掛ければいいのかを具体的な手順で解説します。
1. メディア取材される店は「人気店」ではないという事実。
① よくある勘違い「売れている=取材される」は違う
「うちは行列ができるほど人気だから、いつか取材が来るはず」
この考え方は、残念ながら間違っています。
繁盛しているかどうかと、取材されるかどうかは、まったく別の話です。
実際、メディアで紹介される店を見てみてください。
オープンしたばかりで実績がない店、席数が少なくて行列すらできない店、地方の小さな店舗など、必ずしも「売れている店」ばかりではないはずです。
② 記者が探しているのは「繁盛店」ではなく「ネタ」です
記者やライターは、毎日「何を記事にしようか」と探しています。
彼らが求めているのは「儲かっている店」ではなく「記事になるネタ」です。
ネタとは、読者や視聴者が「へえ、面白い」「誰かに話したい」と思う情報のこと。
つまり、あなたの店が儲かっているかどうかは、記者にとってはどうでもいいのです。
③ メディアは「お店」ではなく「話題」を扱っています
テレビ番組や雑誌の特集を思い出してください。
「おいしい店特集」ではなく「今話題の◯◯特集」という切り口が多いはずです。
メディアが扱っているのは「店」ではなく「話題」です。
あなたの店が話題になる要素を持っているかどうか。これが取材されるかどうかの分かれ目になります。
2. 取材される店に共通する3つの要素
取材される店には、以下の3つの要素が揃っています。
① ニュース性(今、取り上げる理由があるか)
「なぜ今、この店を取り上げるのか」という理由が必要です。
新しい、珍しい、初めて、記録的など、「今だから報じる価値がある」という要素です。
② 物語性(人に話したくなるストーリーがあるか)
単なる商品紹介では記事になりません。
「誰が」「なぜ」「どんな想いで」という人間ドラマがあると、記者は記事を書きやすくなります。
③ 社会性(世の中の流れと接続しているか)
健康志向、SDGs、物価高、高齢化など、今の社会が関心を持っているテーマと接続していると、取り上げられやすくなります。
【図解:取材される店の3要素】

3つすべてが揃う必要はありませんが、少なくとも1つは強く打ち出せる状態を作ることが重要です。
3. ニュース性の作り方【手順解説】
① 「日本初」「地域初」「業界初」を探す方法
「初」という言葉には強い力があります。
ただし、無理に「日本初」を狙う必要はありません。
「初」を見つける3つの視点
「地域で初めて◯◯を導入した店」
「業界で初めて◯◯に挑戦した店」
「この組み合わせは初めて」
たとえば「日本初のラーメン店」は無理でも、「◯◯県初の◯◯スタイルのラーメン店」なら可能性があります。
範囲を狭めることで「初」は作れます。これをロングテールキーワードと言います。
② 「期間限定」「挑戦」「記録更新」の使い方
「初」がなくても、以下の切り口でニュース性は作れます。
「期間限定」→ 今しか体験できない希少性
「挑戦」→ 困難なことに立ち向かうドラマ性
「記録更新」→ 数字で示せる客観的な価値
「3日間限定で復活する幻のメニュー」
「100種類のメニュー制覇に挑戦」
「創業以来の売上記録を更新」など、
切り口次第で普通の出来事もニュースになります。
③ 普通の商品をニュース化する変換ロジック
あなたの店の商品やサービスを、以下の変換フレームに当てはめてみてください。
変換フレーム

ケーススタディ①:廃棄野菜を活用したSDGsメニュー
【Before】
地元農家から仕入れた野菜を使った新しいサラダメニューを始めました。
【After】
「廃棄されるはずだった規格外野菜を100%活用。地元農家と飲食店が連携したSDGsメニューが誕生」
何が変わったか
ある小さなカフェが、地元農家から規格外野菜を仕入れてサラダを作り始めました。
最初は「新メニュー始めました」とSNSで発信していましたが、反応はほとんどありませんでした。
そこで切り口を変えました。
「年間◯トン廃棄される規格外野菜を救う」
「農家の収入増加にも貢献」
「フードロス削減」というSDGsの文脈で発信したところ、地元テレビ局から取材依頼が入りました。
商品自体は同じです。変わったのは「伝え方」だけ。
これがニュース性の作り方です。
4. 物語性の作り方【人が主役になる設計】
① 店ではなく「人」を軸にする理由
記者が書きたいのは「店の紹介」ではなく「人間ドラマ」です。
なぜなら、読者が感情移入できるのは「店」ではなく「人」だからです。
「おいしいパン屋がオープン」より「元銀行員が50歳で夢だったパン屋を開業」のほうが、圧倒的に読みたくなるものなのです。
② 過去→現在→挑戦のストーリー構造
人を主役にしたストーリーには、以下の構造が効果的です。
ストーリーの3部構成
「過去」→ どんな人生を歩んできたか(意外性があると強い)
「現在」→ なぜ今、この店をやっているのか(動機・きっかけ)
「挑戦」→ これから何を目指しているのか(未来へのビジョン)
③ 記者が書きやすいストーリー型テンプレ
以下のテンプレートに当てはめると、記者が記事にしやすいストーリーが作れます。
テンプレート

ケーススタディ②:50歳で脱サラした元教師が始めたカレー店
【Before】
スパイスにこだわった本格カレー店がオープンしました。
【After】
「50歳で教師を辞め、インドで3年修行。元高校教師が故郷で開いた”人生をかけたカレー店”」
何が変わったか
ある地方都市で、スパイスカレー店がオープンしました。
味は本格的でしたが、「新しいカレー店」という情報だけでは、どのメディアも反応しませんでした。
しかし、オーナーの経歴を掘り下げると、こんなストーリーが出てきました。
「30年間、高校で化学を教えていた」
「50歳のとき、生徒から”先生は夢を追いかけたことがあるんですか”と聞かれ、答えられなかった」
「退職金を使ってインドへ渡り、3年間スパイスを学んだ」
「故郷に戻り、”人生で一度は夢を追いかける姿”を元生徒たちに見せたいと開業」
この物語を添えてプレスリリースを送ったところ、地元新聞、テレビ、さらに全国ネットの情報番組まで取材が来ました。
カレーの味は変わっていません。変わったのは「誰がなぜ作っているか」を伝えたこと。
これが物語性の力です。
5. 社会性の乗せ方【時代との接続】
① トレンドに「乗る」のではなく「接続する」
「流行っているからやる」のではなく、「自分たちがやっていることが、実は社会テーマと繋がっている」と気づくことが重要です。
無理にトレンドに乗ろうとすると、本業との整合性が取れなくなります。
そうではなく、今やっていることを社会テーマの文脈で「翻訳」するのです。
② 記者が使いやすいキーワード
以下のキーワードは、記者が記事の切り口として使いやすいものです。
自店との接点を探してみてください。
社会性キーワード一覧
「健康志向」→ 添加物不使用、低糖質、オーガニック
「インバウンド」→ 多言語対応、日本文化体験、地域の魅力発信
「物価高」→ コスパ、価格維持の工夫、満足度向上の取り組み
「SDGs」→ フードロス削減、地産地消、環境配慮
「高齢化」→ シニア向けサービス、バリアフリー、地域コミュニティ
「働き方改革」→ 週休3日、従業員満足度、人材不足への対応
「地方創生」→ 地域活性化、Uターン、ローカルビジネス など。
③ 自店を社会テーマと結びつける変換ワーク
以下の手順で、自店と社会テーマの接点を見つけてください。
変換ワークの手順
① 自店の特徴を10個書き出す
② 上記の社会性キーワードと照らし合わせる
③ 接点があるものを3つ選ぶ
④ 「◯◯(社会テーマ)に対応した◯◯(自店の特徴)」という形で言語化する
ケーススタディ③:物価高でも満足度を上げる店
【Before】
ランチの価格を1,200円から1,500円に値上げしました。
【After】
「物価高時代の”価値ある値上げ”とは? 満足度を落とさず単価を上げた飲食店の戦略」
何が変わったか
ある洋食店が、原材料高騰を受けてランチ価格を値上げしました。
普通なら「値上げのお知らせ」で終わる話です。
しかし、この店は値上げと同時に以下の取り組みを行いました。
「肉の仕入れ先を変更し、同じ価格帯でより品質の高い肉を確保」
「付け合わせの野菜を地元農家から直接仕入れ、鮮度と味を向上」
「値上げの理由と、その分何が良くなったかをメニューに明記」
そして「物価高でも満足度を上げるための値上げ」という切り口でプレスリリースを配信。
経済メディアから「物価高時代の飲食店経営」という特集で取材されました。
値上げという「悪いニュース」を、社会テーマと接続することで「参考になるニュース」に変換した例です。
6. 取材されない店がやっているNG行動
① 「うちは普通なので…」と言ってしまう
これは最もよくある失敗です。
記者から「何か特徴はありますか?」と聞かれたとき、「うちは普通の店なので、特に…」と答えてしまう。
普通の店など存在しません。
あなたがその店を始めた理由、こだわっていること、お客さまから言われて嬉しかったこと。必ず「普通ではない何か」があるはずです。
「普通です」と言った瞬間、記者の興味は消えます。
② 商品説明しかしない
「うちのパンは天然酵母を使っていて、小麦粉は◯◯産で、焼き時間は◯◯分で…」
これは商品説明であって、ストーリーではありません。
記者が知りたいのは「なぜ天然酵母にこだわるのか」「そのこだわりの裏にある想いは何か」です。
商品のスペックではなく、背景にある物語を語れるようにしてください。
③ ニュースになる視点を持っていない
「良いものを作っていれば、いつか認められる」という考え方は、残念ながらメディアには通用しません。
良いものを作ることと、それをニュースとして届けることは、別のスキルです。
記者の立場で「これは記事になるか?」と考える視点を持つことが必要です。
7. 記者視点で考える「取材したくなる店」
① 記者は忙しい → すぐ記事にできる素材が必要
記者やライターは、常に締め切りに追われています。
「取材したい」と思っても、素材が揃っていなければ後回しにされます。
逆に言えば、すぐに記事にできる素材が揃っている店は、取材されやすいのです。
② 写真・数字・背景が揃っている店は強い
記者が記事を書くために必要な素材は、大きく3つです。
取材に必要な3つの素材

この3つが事前に揃っていると、記者は「この店なら取材しやすい」と判断します。
③ 取材は「お願い」ではなく「素材提供」です
「取材してください」とお願いするのではなく、「こんな素材があります。記事のネタとしていかがでしょうか」と提案するのが正解です。
記者にとってメリットのある情報提供をする。これが取材を引き寄せる基本姿勢です。
8. 実践編|取材される店の設計手順
ここまでの内容を踏まえて、実際に取材される店を設計する手順を解説します。
① 自店のニュース性を書き出す
まず、以下の質問に答えてください。
「うちの店の”初”は何か?」(地域初、業界初、組み合わせ初など)
「今だから伝えられることは何か?」(期間限定、挑戦、記録など)
「数字で示せる特徴は何か?」(創業◯年、◯種類、◯%など)
② ストーリー構造にする
次に、オーナーや店の物語を整理します。
「過去」→ どんな経歴・人生を歩んできたか
「現在」→ なぜこの店を始めたか、何にこだわっているか
「挑戦」→ これから何を目指しているか
③ 社会テーマと接続する
自店の特徴と、以下の社会テーマとの接点を探します。
健康志向、インバウンド、物価高、SDGs、高齢化、働き方改革、地方創生
「◯◯(社会テーマ)に対応した◯◯(自店の特徴)」という形で言語化してください。
④ 一枚資料にまとめる
以下の項目を、A4一枚にまとめます。
【店舗基本情報】
店名、所在地、営業時間、連絡先
【ニュース性】
今、取り上げる理由(初、限定、挑戦、記録など)
【物語性】
オーナーのストーリー(過去→現在→挑戦)
【社会性】
関連する社会テーマとの接続
【素材】
使用可能な写真の有無、提供可能なデータ
【連絡先】
取材窓口、対応可能な日時
⑤ プレスリリース/SNS/DMで発信する
作成した資料をもとに、以下のチャネルで発信します。
「プレスリリース配信サービス」→ PR TIMES、@Pressなど
「SNS」→ ニュース性のある投稿としてX(Twitter)、Instagramで発信
「DM・メール」→ 地元メディア、業界メディアの記者に直接連絡
発信のタイミングは、オープン2週間前、記念日、季節イベント前など、記者が「今取り上げる理由」を持てるタイミングを選んでください。
9. まとめ
取材される店とされない店の違いは、「運」ではありません。
取材される店には、ニュース性・物語性・社会性という3つの要素が設計されています。
そして、記者が記事にしやすい素材を、適切なタイミングで届けています。
あなたの店にも、必ず「取材される要素」は眠っています。
それを掘り起こし、言語化し、届ける。この一連の作業を「取材される設計」と呼びます。
取材は運ではなく、設計です。
今日からできることは、自店のニュース性を書き出すこと、オーナーのストーリーを整理すること、社会テーマとの接点を探すこと。
この3つから始めてみてください。
次回予告
本記事の続編として、近日中に
「メディアに取材される店の共通点②|記者に届くプレスリリースの作り方」を公開予定です。(現在執筆中)
具体的なプレスリリースのテンプレートと、配信先の選び方、送るタイミングまで解説します。

