現代の飲食店経営は なかなか難しいフェーズに入っています。
コロナ蔓延~ 物価高(食材コスト増)、最低賃金上昇による人件費増。
お客さまの数は増えない。むしろ減少傾向だ。
しかしコストはどんどん上昇していく。
F/L 60%以内なんてのは昔の話し。今や人件費は30%を超え、原価率に関しては40%近くまでいっている店も多いことだろう。
それだけではない。水道光熱費だって家賃だって高騰化。。
もうどうしていいか、わからなくなっている飲食店経営者も多いことだろう。
今日は、そんな飲食店経営者、または店長にこんな実例をお伝えしながら書いていこうと思います。
あなたの能力。料理をつくり、メニューを開発するアイデアと能力。
それがあれば、今その場所で新しい収益チャネルができあがるという話し。
私はそれを可能にするのは「食品D2C × EC」だと思っています。
実は私はこの「食品D2C × EC」、お客様の案件で数件担当したことがあります。
最初のチャレンジは最終的に目標売上に達することができませんでしたが、
その時の失敗要因を研究していき、3案件目ではオープン4か月目に月商1,000万円を超えて、未だに1,000万円を下回っていないという成功を導き出しました。
結局のところ、食品ECで成功するためには、美味しい商品だけではなく、
コンセプトメイク・ストーリーテリング・動機付け・ウェブマーケティングの大きく分けて4つのカテゴリーを同時に攻めなくてはならないことが私にはわかっています。
今日はそんな私の「成功事例」の立ち上げ戦略について、書いていこうと思います。
特に飲食店経営者の方はぜひ読んでみてください。
1. 「店に来てもらう」以外の稼ぎ方
飲食店の売上は、お客さまが店に来てくれることで成り立っています。
まあそれは当たり前のこと。 でも、その「当たり前」が コロナ禍で一瞬にして崩れた経験を私たちはしたはずです。
客足が戻ったと言われる現代でも、人手不足、原材料高騰、光熱費の上昇……。 「来店型ビジネス」だけに依存するリスクを、肌で感じている経営者は少なくないでしょう。
そこで今、私が注目しているのは、簡単に言うと
「お店の味を、通販で届ける」という選択肢だ。
例えば自分の店のメニューを冷凍食品にする。
自家製の調味料やソースを商品化する。
これまで店でしか味わえなかったものを、全国のお客さまに届ける。
そしてそれが収益源になるなんてとてもいい。
「でも、うちみたいな小さな店が通販なんて……」
そう思う人もいるでしょう。
「知り合いが楽天市場をやって失敗して数百万円損したらしいよ」
そんな声を聞く人もいるでしょう。
実は実際にこの領域で成功している店は少ない。
なぜかというと、そこに「戦略」がなく、
飲食店でやっているやり方と同じようにやっているだけだからだ。
ECはそれでは売れない。
この記事では、飲食店が「店の外」で稼ぐ仕組みをつくるための考え方と、具体的な方法を詳しく解説していこうと思う。
2. なぜ今、飲食店が「通販」に乗り出すべきなのか
■ 飲食店の「当たり前」が変わった
少し前まで、飲食店の売上を伸ばす方法は限られていた。
「席数を増やす」「回転率を上げる」「客単価を上げる」「2号店、3号店を出す」
どれも「店に来てもらう」ことが前提です。
しかし今、この前提そのものが揺らいでいます。
人口減少、人手不足、働き方の変化、物価高……。
「店に来てもらう」だけでは、伸ばせる売上に限界がある。
だからこそ、「店に来なくても買える」という選択肢を持つことが、
これからの飲食店には必要だと、私は思うのです。
■ 通販は「大手の土俵」ではなくなった
「通販なんて、大手メーカーがやることでしょ?」
10年前ならその通りだったけど 今は少し違う。
ネット通販の世界では、むしろ「大量生産・大量販売」のモデルが苦戦しています。 消費者が求めているのは、「どこでも買える無難な味」ではない。 「ここでしか買えない、誰かのこだわりが詰まった味」 。
それが求められている時代だということなのだと思う。
そして飲食店には、それをつくる土台がある
毎日、厨房で作り続けてきた味。
お客さまの反応を見ながら磨いてきたレシピ。
「この店のこれが好き」と言ってもらえる看板メニュー。
これこそが、通販で勝つための最大の武器になると、私は思うのです。
■「店の延長」ではなく「別事業」として考える
ここでひとつ、大事な視点をお伝えしたい。
飲食店が通販(EC)を始めるとき、多くの人が「店の延長線上」で考えてしまう。 「うちの料理を、そのまま届けられたらいいな」と。
これが落とし穴だ。
通販は、店舗営業とはまったく別の事業だし、別のジャンルだ。
お客さまとの接点がまるで違う。
届け方が違う。
売り方が違う。
そして「買い方」が違う。
「店でうまくいっているから、通販でもうまくいく」ということは無いと思った方がいい。
逆に言えば、通販を「別事業」としてきちんと設計すれば、店舗とは別の収益の柱を立てられる。
来店客がゼロの日でも、通販の売上は入ってくる。
この「別の収益源」を持つことが、これからの飲食店経営の安定に直結するのだし、飲食店のある意味「未来」とも言えるのだと思う。
3. 「売れる通販」と「売れない通販」を分けるもの
■ 成功している食品通販の共通点
食品通販で成功しているブランドには、ある共通点がある。
それは、「誰もが知っている”ふつう”を、極限まで高めている」 ということだ。
たとえば、餃子。 たとえば、ハンバーグ。などのこだわった料理。
たとえば、醤油やケチャップといったこだわりの調味料。
これらは、誰もが食べたことのある「ふつうの食べ物」だ。
だからこそ、品質の差が一口でわかる。
「いつも食べているものより、明らかに美味しい」と実感できる。
一方で、見たこともない珍しい食材や、新しくて味をイメージできない料理。食べ方がよくわからない高級食材などは、通販では苦戦しやすい。
比較対象がないから、「何がすごいのか」が伝わりにくいのだ。
■ 「日常型ラグジュアリー」という考え方
成功している食品通販(食品D2C)には、ひとつの哲学がある。
「特別な1日のための贅沢」ではなく、「ふつうの毎日の質を上げる」
レストランは「特別な日」に行く場所だ。
でも、通販で届ける商品は「ふつうの日」に食べるもの。
だから、「ハレの日のごちそう」を目指すのではなく、
「毎日の食卓を1レベル上げる」 ことを目指す。
これを、私は 「日常型ラグジュアリースタンダード」 と呼んでいる。
たとえて言えば、「最高級の白いTシャツ」のようなものだ。
パーティドレスのような派手さはない。
でも、毎日着るものだからこそ、その質の高さが日常の満足度を確実に上げてくれる。
飲食店が通販を始めるなら、この視点で商品を考えてほしい。
「うちの店で一番人気のメニューを、家でも食べられるようにする」
「プロが本気で作った”いつもの味”を届ける」
それもいいが、通販(食品D2C)では、あくまで「買う人が欲しいもの」に特化させるべきだ。
それは何かと聞かれれば私はきっとこう言うだろう。
それを買う人は誰なのですか? なんでそれを買う必要があるのですか?と。
売れる通販商品の設計思想に、そのふたつの問いは必ず必要だ。
■ 「こだわり」の方向を間違えると失敗する
ここで、多くの飲食店が陥りがちな失敗について触れておきたい。
「こだわり」が、お客さまではなく自分に向いてしまう こと。
「この素材じゃないとダメだ」
「この製法を守りたい」
「パッケージは妥協したくない」
気持ちはわかる。
しかし、そのこだわりが「お客さまの喜び」につながっているかどうか、冷静に見極める必要がある。
たとえば、開封体験を重視しすぎて、やたら豪華な箱に何千円もかける。
見た目は素晴らしい。でも、お客さまはその箱にお金を払いたいわけではない。
あるいは、「うちの世界観を表現したい」と、芸術的なウェブサイトを作る。
美しい。でも、肝心の「買いやすさ」が犠牲になっている。
こだわりは大事だ。
ただし、それが売上につながるこだわりかどうかを常に問い直すこと。
「自己満足のためのこだわり」と「お客さまの満足のためのこだわり」は、似ているようで全然違う。
4. 通販で「売れる仕組み」をつくる——CVR最大化の技術
ここからは、具体的なマーケティングの話に入る。 専門用語も出てくるが、すべて「店舗経営の言葉」に置き換えながら説明するので、安心してほしい。
■ まず押さえるべき「3つの指標」
通販事業で利益を出すには、3つの数字を理解する必要がある。
① CPA(Cost Per Acquisition)= 顧客獲得単価
1人のお客さまを獲得するのにかかる広告費のこと。
たとえば、広告に10万円使って、20人が購入してくれたら、CPAは5,000円。 「1人のお客さまを連れてくるのに5,000円かかった」という意味だ。
店舗で言えば、「チラシを撒いて、何人が来店してくれたか」を計算するようなもの。
② CVR(Conversion Rate)= 成約率
商品ページを見た人のうち、何%が実際に購入したかを示す数字。
100人がページを見て、3人が買ってくれたら、CVRは3%。
店舗で言えば、「店の前を通りかかった人のうち、何人が入店して注文してくれたか」に近い。
③ LTV(Life Time Value)= 顧客生涯価値
1人のお客さまが、取引期間全体を通じて、いくらの売上をもたらしてくれるか。
初回購入だけで終わるお客さまと、毎月リピートしてくれるお客さま。 同じ「1人の獲得」でも、事業へのインパクトはまったく違う。
LTVが高ければ、CPAが多少高くても利益が出る。
LTVが低ければ、いくら新規を獲得しても赤字が続く。
この関係を理解することが、通販事業の第一歩だ。
■ 通販の利益構造——「ユニットエコノミクス」という考え方
この3つの指標を組み合わせて、
「1人のお客さまから、ちゃんと利益が出ているか?」 を判断する考え方がある。
これを 「ユニットエコノミクス」 と呼ぶ。
計算式はシンプルだ。
LTV > CPA + 原価 + 諸経費
この式が成り立っていれば、お客さまを獲得するほど利益が積み上がる。
成り立っていなければ、売れば売るほど赤字になる。
ここで、食品通販ならではの重要な考え方を紹介したい。
「原価は高くても構わない。その分、CPAを下げろ」
一般的なビジネスでは、原価を下げることが利益に直結する。
しかし食品通販では、あえて逆の発想をとる。
なぜか?
「美味しい」という体験は、口コミを生むから だ。
原価をケチって「まあまあの味」にすれば、原価率は下がる。
しかし、お客さまは感動しない。
口コミは生まれない。
結果として広告に頼るしかなくなるわけだ。
逆に、原価をかけて「圧倒的に美味しい」商品をつくれば、お客さまが勝手に広めてくれる可能性がある。
SNSに投稿し友人に勧める。ギフトとして贈る。
広告費をかけなくても、新規のお客さまが集まりやすい構図ができるわけだ。
原価30%で広告費20% vs 原価40%で広告費10%
単純な原価率だけを見れば、前者のほうが「優秀」に見える。
しかし、広告依存度が高いビジネスは脆い。
広告費が高騰すれば、一気に利益が吹き飛ぶのだから。
食品通販で勝っているブランドは、「原価に投資して、広告費を抑える」 という構造を意図的につくっているのだから、強いわけだ。
■ 商品ページは「3秒」で勝負が決まる
では、具体的にCVRを上げるにはどうすればいいか。
最も重要なのは、商品を紹介するページ(ランディングページ、LP)です。
お客さまがそのページを見て、購入を決めるかどうか。
実は、その判断は最初の3秒でほぼ決まっているのです。
だから、ページの一番上(ファーストビュー)で何を見せるかが勝負になる。
ここで訴えるべきは、「効率」や「便利さ」ではありません。
「これを食べてみたい」 「美味しそう」 「この味を家族に食べさせたい」
人間が本能的に持っている欲求に、直接語りかけることが重要です。
■ 売れるLPには「型」がある——セールストークの再現
売れる商品ページには、共通の「型」がある。
これは、優秀な店員のセールストークを再現したものだと思ってほしい。
【STEP 1】未来・結果を見せる(ファーストビュー)
この商品を買うと、食卓がどう変わるか。 美味しそうな写真、幸せそうに食べている場面。 「こうなれる」というイメージを最初に見せる。
店舗で言えば、入り口に置かれた「本日のおすすめ」の写真付きメニュー。 「これ食べたい」と思わせる仕掛けが必要だ。
【STEP 2】共感と証拠を示す
「本当に美味しいの?」という疑問に答えるのがここです。
「シェフの経歴や受賞歴、メディア掲載実績」
「SNSでの口コミやレビュー(UGC=ユーザー生成コンテンツ)」
「○○店で累計10万食」といった実績数字」
「この人が作っているなら信頼できる」と思ってもらえるような材料を揃えましょう。
飲食店には、すでにこの「権威性」がある。
「実際に店舗で出している味」
「プロのシェフが監修」——これは強力な信頼材料だ。
【STEP 3】今買うべき理由を伝える(クロージング)
「また今度でいいか」と思わせたら負けです。
「期間限定、数量限定」「今だけの割引」「初回お試し価格」
「後回しにする理由」を潰して、今すぐ購入ボタンを押してもらう。
店舗で言えば、「今日はこれが特別価格なんです」と伝える、あの一言がそれにあたりますね。
■ 「買いにくさ」はCVRの最大の敵
お客さまが「買おう」と思っても、入力フォームが面倒だと離脱します。経験ありますよね。
これは、店舗で言えば 「レジ待ちの行列が長すぎて帰ってしまう」 ようなもの。とても敏感に意識するポイントです。
CVRを最大化しているブランドは、
この「買いにくさ」を 執拗なまでに排除 しています。とても重要ですね。
「郵便番号を入れたら住所が自動で入る」とか。
「クレジットカード番号の入力ミスを自動で修正」とか。
「スマホで入力しやすいチャット形式のフォーム」とか。
「確認画面を省略して、すぐに注文完了」ができるとか。
「サイトを離れようとした瞬間に表示される「離脱防止ポップアップ」」を出すとか。
「買いたい」と思った瞬間の熱が冷めないうちに、購入を完了させる。
それが必要です。
ここで1%のCVR改善ができれば、売上は大きく変わるのです。
細部への執着が、数字をつくる。ぜひ覚えておいてください。
5. LTVを最大化する——「1回の購入」で終わらせない仕組み
■ 通販の本当の利益は「2回目以降」にある
ここまでは「新規のお客さまに買ってもらう」話をしてきました。
しかし、通販ビジネス(D2C・EC)の本質は、その先にあります。
それは、
「1回買ってもらう」ことよりも、
「2回目、3回目と買い続けてもらう」ことのほうがはるかに重要だ。
ということ。
新規のお客さまを獲得するには、広告費がかかります。
しかし、一度買ってくれたお客さまに再度買ってもらうのは、コストがほとんどかからない場合が多くあるのです。
仮に、
-
新規獲得のCPAが5,000円
-
リピーターへの再購入促進コストが500円
だとしたら、同じ売上でも、利益率は10倍違う わけです。
だから、
「一度きりの購入」で終わらせない仕組み を最初から設計しておく必要があるのです。
■ 「買った直後」が最大のチャンス——サンクスアップセル
LTVを上げる施策として、最も即効性があるのが 「サンクスアップセル」 という手法です。
お客さまが注文を完了した瞬間。
それは、最も購買意欲が高まっている瞬間でもあるわけです。
そこで、
注文完了画面(サンクスページ)で、こう提案する。
「今ならもう1つ、さらにお得に買えます」
「一緒に買われている人気商品はこちら」
この一言を添えるだけで、客単価は劇的に変わってきます。
店舗で言えば、お会計のときに「今日のおすすめの小鉢、いかがですか?」と声をかけるようなものだ。
押し付けがましくなく、でも絶妙なタイミングで提案する。
重要なのは、「比較検討させない」 こと。
すでに購入を決めた直後なので、「買うかどうか」ではなく「追加するかどうか」だけを判断させる。
だからCVRが非常に高い。
通販で成果を出しているブランドは、例外なくこの仕組みを取り入れている場合が多いのです。
■ 「定期購入」という安定収益——サブスクリプションの設計
LTVを最大化する王道は、定期購入(サブスクリプション) の仕組みを用意することだ。
たとえば、
-
月額制で毎月届く「おまかせセット」
-
定期購入者は全品20%オフ
-
好きな商品を自由に組み合わせ可能など・・
こうした仕組みがあると、お客さまは「毎回注文する手間」から解放されやすくなる。 店側は、将来の売上が予測可能になる。というわけです。
飲食店経営者なら分かるはずですよね。
「来月の売上が読める」ことが、どれほど経営を安定させるか。
定期購入の会員が増えれば、その分だけ「確定した売上」が積み上がる。
新規獲得の広告に頼らなくても、事業が回るようになるのです。
■ CRM——購入後のフォローが「ファン」をつくる
もうひとつ、LTVを上げるために欠かせないのが
CRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理) です。
難しく聞こえるかもしれませんが、
要は 「買ってくれたお客さまを放置しない」 ということです。
商品を届けて終わり、ではないということですね。
「この商品、こんなアレンジもできますよ」(レシピ紹介)
「今が旬の食べ方はこれです」(季節の提案)
「他のお客さまはこんな風に楽しんでいます」(UGCの共有)
メールやLINEで、商品をより楽しむための情報を届ける。
お客さまとの接点を維持し続ける。
店舗で言えば、常連のお客さまに「今日はこれがおすすめですよ」と声をかけるようなものですね。 その積み重ねが、単なる「購入者」を 「ファン」 に変えていくのです。
また、ぜひやってほしいのが 「ステップメール」 です。
「購入翌日:「届きましたか?」のフォローメール」
「3日後:「美味しい食べ方」の紹介」
「1週間後:レビュー依頼」
「1ヶ月後:「そろそろいかがですか?」のリマインド」
購入からの経過日数に応じて、自動でメールが送られる仕組み。
一度設定すれば、あとは自動で「接客」が行われる仕組みです。
「顧客との関係性を、仕組みで維持する」
これがCRMの本質なのです。
6. 店舗と通販を「つなげる」と、何が起きるか——OMO戦略
■ 「店で食べて、家で買う」という流れ
通販を始めると、店舗との相乗効果が生まれる。
店に来てくれたお客さまが、「この味、家でも食べたい」と思う。
そしてその場でQRコードを読み取って、通販サイトで購入してくれる。
あるいは逆に、通販で商品を買ったお客さまが「この店に行ってみたい」と来店してくれる。
つまりこれは、
オンラインとオフラインの垣根をなくす。
という取り組みとも言えます。
そしてこれを、
「OMO(Online Merges with Offline)」 と言います。
店舗とEC(通販)を別々に考えるのではなく
「ひとつの顧客体験」として設計する。
この発想が、これからの飲食店経営には欠かせないのです。
■ データで「勘と経験」を超える
通販を始めると、店舗だけでは見えなかったものが見えてくる。
-
どんな属性の人が買っているのか
-
何曜日、何時に注文が多いのか
-
どの商品の組み合わせが多いのか
-
一度買った人のうち、何%がリピートしているのか
-
リピートする人としない人の違いは何か
こうしたデータを蓄積し、分析することで 打ち手の精度が上がる のです。
たとえば、
「購入後30日でリピート率が急落する」→ 28日目にリマインドメールを送る
「Aを買った人の60%がBも買っている」→ Aの購入者にBをレコメンドする
「週末の夜に注文が集中する」→ 金曜夕方にLINEでプッシュ通知を送る
などなど。
勘や経験だけに頼らない、データに基づいた意思決定ができるようになる。
これは、店舗経営だけでは得られない、大きなアドバンテージです。
7. 始めるなら、こう進める——ロードマップと落とし穴
■ フェーズ1:「1つの看板商品」で型をつくる
通販を始めるとき、最初から商品を増やしすぎてはいけない。
まずは、「これがうちの看板だ」と言える1つの商品に絞って開発しよう。
この商品を「ヒーロー商品」と言うのです。
店で一番人気のメニュー。 「これだけは負けない」と自信を持てるもの。 それに「特別さ」というエッセンスを加えて、通販で売れる形に仕上げる。
この段階でやるべきことは、「売れる仕組みの型」をつくること。
・LPの構成を固める
・CVRを計測し、改善を繰り返す
・CPAとLTVのバランスを把握する
・サンクスアップセルの効果を検証する
・CRMの基本導線を整える
1つの商品で「勝ちパターン」を確立してから、次に進む。
これが、失敗しない鉄則だ。
■ フェーズ2:SKU拡大と販路拡張
「売れる型」が見えてきたら、商品数(SKU)を増やしていく。
看板商品(ヒーロー商品)で獲得したお客さまに、次に何を買ってもらうか。
クロスセル(関連商品)、アップセル(上位商品)の選択肢を用意しよう。
そして同時に、販路も広げていきます。
-
楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング(いわゆるECモール)
-
LINEギフト
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ふるさと納税
-
百貨店やスーパーへの卸売り などなど。
自社サイトだけでは届かないお客さまに、商品を届けられるようにしましょう。
ただし、自社EC(D2C)を軸に据えることは変わらない。
モールは「認知拡大」と「新規獲得」の場。 利益を積み上げるのは、あくまで自社サイトでのリピート購入というスタンスが大事です。
■ 絶対に避けるべき「3つの落とし穴」
最後に、通販ECを始めるときに必ず避けるべき失敗をまとめておきましょう。これは実際に私がしくじった事例に基づいて書いていきますね。
【落とし穴①】
最初から在庫を抱えすぎる
「まとめて作ったほうが原価が下がる」
正しい。しかし、それは 売れることが分かってから の話だ。
最初から大量生産すると、売れなかったときに身動きが取れなくなる。
資金がロックされ、改善のための投資もできなくなる。
まずは少量で始めて、需要を見ながら調整する。
「機動力」を失わないことが、初期フェーズでは最も重要です。
【落とし穴②】
パッケージや同梱物にお金をかけすぎる
「Unboxing体験を良くしたい」。
気持ちはわかる。開封の瞬間のワクワク感は大事です。
しかし、最初から豪華な箱、凝った印刷物、オリジナルの緩衝材……とコストをかけるのは本末転倒。収益も圧迫します。
お客さまが本当に求めているのは、「美味しいかどうか」 。
パッケージの豪華さで感動しても、味が期待以下ならリピートはない。
原価は「味」に投資する。パッケージは後から改善すればいい。
【落とし穴③】
「ブランディング」を勘違いする
おしゃれなロゴ、美しい写真、芸術的なウェブサイト。
それは「ブランディング」の一部ではあるが、本質ではない。
ブランディングとは「この店の商品なら間違いない」という直感的な印象を持ってもらうことだ。
そして、見た目の美しさと引き換えに「買いにくいサイト」になっていないか?
デザイン性を優先するあまり「何がいくらで買えるのか」が分かりにくくなっていないか?
「ECはアートではなく商売だ」
この言葉を、常に頭に置いておいてほしい。
8. 「店の外で稼ぐ」という選択肢を持つ意味
飲食店の仕事は、大変です。
毎日の仕込み、営業、片付け。
人の採用と教育。 原材料の高騰、光熱費の上昇。
そのうえで、「通販も始める」となると、負担が増えるように感じるかもしれません。
でも、考えてみてほしいのです。
通販という「別の収益源」を持つことが、店を守ることにつながる ということを。
客足が減る時期があっても、通販の売上がある。
店を閉めている時間にも、注文は入ってくる。
遠くに住んでいて来店できない人にも、自分の味を届けられる。
「店に来てもらう」だけが、飲食店の売上ではない。
この記事で紹介した内容は、すべて実際に成果を出している”あるショップ”の立ち上げ戦略だ。 ただもちろん、すべてを一度に始める必要はない。
まずは、「うちの店なら、何を商品化できるだろう?」と考えてみることから始めてほしいのです。2026年は「はじめる」としにしてほしい。
私は飲食業の未来のために、心からそう思っています。
あなたの店の味を待っている人が、日本中にいる。
その人たちに届ける方法は、もうここに書きました。
あとはチャレンジのみ。
あなたの店が、これからも10年も20年も続く飲食店でありますように。

