「うちの看板メニュー、通販で売れば絶対売れるはず」
そう考えて飲食店ECを始めたものの、思ったように売れない。そんな経験をお持ちの方は少なくありません。
実は、店舗メニューをそのままEC商品として出しても売れないのには、明確な理由があります。
この記事では、飲食店の店舗メニューを「売れる通販商品」に変えるための具体的な6つのステップを解説します。
1. なぜ店舗メニューはそのままではECで売れないのか
飲食店通販で最初につまずくポイントは、「店で売れているものが、そのままネットでも売れる」という思い込みです。
店内で提供する料理とEC商品では、お客さまが買っているものがまったく違います。
店内で売れているもの
- 出来たての温度・香り・盛り付け
- 店の雰囲気・接客・空間体験
- 「今すぐ食べられる」という即時性
- 料理人の技術をその場で味わう体験
- とにかく「美味しさ」
ECで求められるもの
- 家庭で「失敗なく再現できる」安心感
- 冷凍庫に収まるサイズと保存のしやすさ
- 調理の手軽さと時短効果
- 「買う理由」が明確に伝わる商品説明
- とにかく「安全性」
つまり、店舗では「料理」を売っていますが、ECでは「商品体験」を売ることになります。
この違いを理解せずに、店のメニューをそのまま冷凍して送っても、お客さまの期待とズレてしまうのです。
飲食店がEC・物販に参入する際は、まず「売るものが変わる」という前提に立つことが出発点になります。
2. STEP1「料理」ではなく「商品」に名前を変える
なぜ必要か
店舗メニューの名前は、目の前にいるお客さまに向けたものです。「本日のおすすめ」「シェフ特製ハンバーグ」といった名前は、店内では雰囲気を伝えますが、ECでは何が届くのかわかりません。
飲食店の商品開発において、商品名は「検索される言葉」であり「届くものの説明」でもあります。
具体的に何をするか
商品名を考えるときは、次の3つの要素を入れてください。
① 何が届くか(商品の中身) ② どれくらい届くか(数量・容量) ③ どんなシーンで使えるか(用途・ターゲット)
変換例
| 店舗メニュー名 | EC商品名 |
|---|---|
| シェフ特製ハンバーグ | 肉汁あふれる黒毛和牛ハンバーグ 150g×4個セット |
| 本日のパスタ | 湯煎5分で本格 海老のトマトクリームパスタ 2人前 |
| 自家製餃子 | 焼くだけ簡単 肉汁たっぷり冷凍生餃子 50個入り |
| 看板メニュー唐揚げ | 揚げたてサクサク 大分風唐揚げ 1kg ファミリーパック |
手順
- 現在の店舗メニュー名をリストアップする
- 各メニューについて「何が・いくつ・誰向けか」を書き出す
- その要素を組み合わせて、検索されそうな言葉で商品名を作る
- 家族や友人に見せて「何が届くかわかるか」を確認する
3. STEP2「味」ではなく「使われ方」を設計する
なぜ必要か
店舗では、料理人が最高の状態で提供できます。しかしECでは、届いた商品をお客さまが自宅で調理します。
どれだけ味が良くても、「調理が面倒」「失敗しそう」と思われた時点で購入されません。飲食店の冷凍商品は、味の良さよりも「使いやすさ」で選ばれることが多いのです。
具体的に何をするか
お客さまの調理ステップを極限まで減らす設計をします。目安は「3ステップ以内で完成」です。
① 調理方法を1つに絞る
- 「湯煎または電子レンジ」ではなく「湯煎10分で完成」と断言する
- 複数の選択肢はお客さまを迷わせ、失敗リスクを高めます
② 時間を明記する
- 「温めてお召し上がりください」ではなく「500Wで3分30秒」と具体的に
- 時間がわかると「これなら自分にもできる」と安心できます
③ 失敗しない導線を作る
- 解凍方法、加熱時間、盛り付け例まで写真付きで説明する
- 「よくある失敗」と「その防ぎ方」を先回りして伝える
変換例
| 店舗での提供 | EC商品での設計 |
|---|---|
| フライパンで焼いて提供 | 湯煎のみで完成(袋のまま10分) |
| オーブンで焼き上げ | トースターで5分(アルミホイル不要) |
| 複数の調理工程 | 電子レンジ600W 4分のみ |
手順
- 商品の調理方法を書き出す
- 工程が3つ以上あれば、減らせないか検討する
- 調理時間を計測し、秒単位で記載する
- 家族に調理してもらい、迷うポイントを洗い出す
- 迷うポイントをすべて説明書きに反映する
4. STEP3「量」を店基準から家庭基準に変える
なぜ必要か
店舗の1人前は、その場で食べきる量として設計されています。しかしECでは、家族構成や冷凍庫の空き状況が購入の判断基準になります。
「1人前ずつ小分け」「家族4人で2回分」など、家庭のリアルな使い方に合わせた量の設計が必要です。
具体的に何をするか
① 家族単位で考える
- 1〜2人暮らし向け:2食分セット
- ファミリー向け:4〜6食分セット
- まとめ買い派向け:10食以上の大容量
② 冷凍庫サイズを意識する
- 一般的な家庭用冷凍庫の1段に収まるサイズを基準にする
- パッケージの厚みは5cm以内が理想的です
③ 小分け包装にする
- 「使いたい分だけ取り出せる」状態にする
- 一度解凍したら使い切りが必要な設計は避ける
変換例
| 店舗の量 | EC商品の量設計 |
|---|---|
| ハンバーグ1人前200g | 150g×4個(個包装)で家族で使いやすく |
| 餃子12個(1人前) | 50個入り(10個ずつトレー分け)で複数回使用可能 |
| カレー1皿分 | 180g×6袋セットで1人ランチにも家族ディナーにも |
手順
- ターゲットの家族構成を決める(1〜2人/ファミリー/まとめ買い)
- その家庭で「1回に使う量」を想定する
- 1回分ずつ小分けできる包装を設計する
- 実際の冷凍庫に入れてみてサイズを確認する
5. STEP4「価格」を原価ではなく”置き換え価値”で決める
なぜ必要か
飲食店ECでよくある失敗が「原価から逆算して価格を決める」ことです。
原価に送料と利益を乗せると、「この値段なら外食したほうがいい」という価格になりがちです。お客さまは原価ではなく、「これを買うと何が得られるか」で判断します。
具体的に何をするか
価格設定は「外食したらいくらか」「自分で作ったらどれだけ大変か」との比較で決めます。
① 外食比較ロジック
- 「家族4人で外食すれば12,000円 → この商品なら3,980円で同等の満足」
- 外食の何割かで同じ体験ができる、という見せ方をします
② 手間の置き換え価値
- 「買い物・下ごしらえ・調理で2時間 → 湯煎10分で完成」
- 時間を買う価値として価格を正当化できます
③ 価格帯の目安
- 日常使い:1食あたり500〜800円
- ちょっと贅沢:1食あたり1,000〜1,500円
- ギフト・特別な日:1セット3,000〜5,000円
変換例
| 原価ベースの考え方 | 置き換え価値の考え方 |
|---|---|
| 原価800円+送料+利益=2,500円 | 外食なら1人2,000円×2人=4,000円 → 2,980円でお得感 |
| ハンバーグ4個で原価1,200円 | 手作りの手間2時間+材料費=3,000円相当 → 2,480円で時短価値 |
手順
- 同じ満足が得られる外食の価格を調べる
- 自分で作った場合の材料費と時間を計算する
- 外食価格の50〜70%を目安に価格を設定する
- 「〇〇と比べてお得」という説明文を用意する
6. STEP5「料理説明」ではなく「買う理由」を書く
なぜ必要か
店舗メニューの説明は「どんな料理か」を伝えれば十分です。しかしEC商品は、説明文だけで購入を決断してもらう必要があります。
「おいしい」「こだわり」だけでは、お客さまは動きません。「この商品を買うと、自分の生活がどう変わるか」を具体的にイメージさせることが重要です。
具体的に何をするか
商品説明は「特徴」ではなく「ベネフィット(お客さまが得られる利益)」を中心に書きます。
① Before/Afterを明確にする
- Before:仕事で疲れて帰宅、料理する気力がない
- After:湯煎10分で、家族に「おいしい!」と言われる夕食が完成
② 具体的なシーンを描写する
- 「忙しい平日の夜に」「急な来客があったときに」「頑張った自分へのご褒美に」
- 使う場面がイメージできると、購入のハードルが下がります
③ 数字で信頼感を出す
- 「累計10,000食突破」「リピート率78%」「〇〇産黒毛和牛100%使用」
- 抽象的な「おいしい」より、具体的な数字が信頼を生みます
変換例
| 料理人目線の説明 | お客さま目線の説明 |
|---|---|
| 厳選した黒毛和牛を使用し、じっくり焼き上げました | 仕事で疲れた日も、湯煎10分で”ちゃんとした夕食”が出せます。「今日のハンバーグおいしい!」と家族に言われる、そんな食卓が手軽に実現します |
| 職人が一つひとつ手包みしています | 買い物・下ごしらえ・包む手間、ぜんぶカット。冷凍庫から出して焼くだけで、週末の夕食が15分で完成します |
手順
- 「この商品を買う人は、どんな悩みを持っているか」を3つ書き出す
- 「この商品を使うと、その悩みがどう解決するか」を書く
- 具体的な使用シーンを3パターン用意する
- 説明文の最初に「悩み→解決」の流れを入れる
7. STEP6 冷凍・配送前提で味を再設計する
なぜ必要か
店舗でおいしい料理が、冷凍・解凍後もおいしいとは限りません。飲食店の冷凍商品開発では、「冷凍しても味が落ちないレシピ」への再設計が必要です。
冷凍すると水分が抜けてパサつく、解凍時に食感が変わる、再加熱で味が濃くなる——こうした変化を前提に、味を調整します。
具体的に何をするか
① 冷凍に強い食材を選ぶ
- 向いている:ひき肉、煮込み料理、ソース類、パン生地
- 向いていない:生野菜、豆腐、こんにゃく、じゃがいも(煮崩れる)
② 味付けを調整する
- 冷凍→解凍で塩味は薄く感じやすいため、やや濃いめに設計
- 逆に、再加熱で煮詰まる料理は薄めに調整
③ 解凍・再加熱後の味をテストする
- 冷凍→1週間保存→解凍→再加熱の状態で試食する
- 出来たての味ではなく、お客さまが食べる状態で評価する
④ 食感の劣化対策をする
- 衣がしなっとする揚げ物は、トースターでの再加熱を推奨
- パスタは茹で時間を短めにして、再加熱後にちょうどよくなるように
手順
- 現在のレシピを冷凍→1週間保存→解凍→再加熱してテストする
- 味・食感の変化を記録する
- 問題がある部分のレシピを調整する
- 再度テストして、お客さまが食べる状態でおいしいか確認する
- 調理説明書に「おいしく食べるコツ」を記載する
8. よくある失敗パターン
飲食店がECを始めるときによく見られる失敗パターンを4つ紹介します。
① 「店で人気No.1だから売れる」と思い込む
店で人気の理由は、出来たての状態・店の雰囲気・接客など、その場の体験込みであることが多いです。
ECでは「冷凍で届いても価値が伝わるか」という視点で選び直す必要があります。
対策:人気順ではなく「冷凍・配送に向いているか」で商品を選ぶ
② 店の感覚で量を決める
「1人前150gがちょうどいい」という店舗の感覚で量を決めると、ECでは「中途半端で使いにくい」と感じられることがあります。
対策:家族構成・使用シーンから逆算して量を設計する
③ 調理方法が面倒
「フライパンで焼いてから、オーブンで仕上げてください」——こうした手順は、店では当たり前でも、家庭では「面倒」の一言で購入されません。
対策:調理工程を3ステップ以内に収める。理想は「温めるだけ」
④ 商品説明が料理人目線になっている
「厳選素材を使用」「手間暇かけて」「こだわりの製法」——こうした説明は、料理人にとっては誇りですが、お客さまには「で、私にとって何がいいの?」が伝わりません。
対策:説明文は「お客さまの悩み→この商品で解決」の流れで書く
9. まとめ
飲食店がECで成功するために最も大切なのは、「料理を売る思考」から「商品を設計する思考」への転換です。
店舗とECの違いを改めて整理します。
| 項目 | 店舗 | EC |
|---|---|---|
| 売るもの | 料理体験 | 商品体験 |
| 名前 | 雰囲気が伝わればOK | 何が届くかが明確 |
| 味 | 出来たてがベスト | 再加熱後がベスト |
| 量 | 1人前 | 家族単位・小分け |
| 価格 | 原価+利益 | 外食・手間との比較 |
| 説明 | 料理の特徴 | 買う理由(ベネフィット) |
この6つのステップを実践することで、「店舗メニューをそのまま出して売れない」状態から脱却できます。
最後にもう一度、6つのステップを確認しておきましょう。
① 「料理」ではなく「商品」に名前を変える
② 「味」ではなく「使われ方」を設計する
③ 「量」を店基準から家庭基準に変える
④ 「価格」を原価ではなく”置き換え価値”で決める
⑤ 「料理説明」ではなく「買う理由」を書く
⑥ 冷凍・配送前提で味を再設計する
まずは1つの商品で試してみてください。店舗メニューを「売れるEC商品」に変えるヒントが、きっと見つかるはずです。

