飲食店の マーケットインとプロダクトアウト戦略

飲食店経営

今日は「マーケットインとプロダクトアウト」について、飲食業に照らし合わせて書いていこうと思います。

私個人的には、もう30年以上前に勉強した言葉なのですが、
当時の私の理解は本当に薄くて。。本質的な意味を理解していなかったなと思う言葉です。

今はいろんな業態開発やメニュー開発を企画する中で、まさに身を持って失敗から学んだ考え方があります。

今日はそんな「私の経験の中から自分で気付きを得た」マーケットインとプロダクトアウトについて書いていこうと思います。

それでは始めていくとしましょう。


マーケットインが正しいのか、それともプロダクトインか。

マーケットインとプロダクトアウト。

経営の本を開けば、よく出てくるこの2つの言葉。
飲食業界でも「市場を探せ」「いや、まず自分ができることからだ」という「どっちからか議論」は尽きないでしょう。

私は飲食業界に携わって35年。
店舗運営の現場から、コンサルタントとして外部から関わる立場まで、さまざまな角度でこの業界を見てきました。
飲食店だけでなく、店舗と言われる業態で数百店舗は見てきたでしょう。
3店舗から始まった会社を株式上場まで持っていく拡大フェーズを、外部支援した経験もある。

そんな私がその中で感じていること。
それは、

「マーケットインとプロダクトアウトは両方必要だ」ということ。

まず経験論として、
私はどちらか一方だけで成立している店をほとんど見たことがない。

今日のこの記事では、飲食店の現場で本当に使える形で この2つの概念を整理してみようと思う。

読み終わる頃には、「次に何を売るか」「どうメニューを考えるか」の判断軸が、少しクリアになっていれば嬉しく思います。


まず、一般的な定義を確認しておこう

最初に、教科書的な定義として「マーケットインとプロダクトアウト」を押さえておこう。

マーケットインとは、市場やお客さまのニーズを起点に業態や商品を作る考え方だ。「売れている店を分析する」「お客さまの声を集める」「需要があるところに供給する」といった発想がこれにあたる。

プロダクトアウトとは、作り手の技術・想い・強みを起点に商品を作る考え方だ。「自分たちが作りたい店を作る」「技術やこだわりを磨く」「世の中にない価値を提示する」という姿勢がこちらだ。

多くのセミナーや書籍では、この2つが対立構造で語られる。
「これからはマーケットインの時代だ」とか、「いや、プロダクトアウトでなければ差別化できない」とか。

だが、飲食の現場に立っていると、この二項対立はほとんど役に立たない。
なぜならもう一度言うが、どちらか一方だけで成立している店を、私は見たことがないからだ。


「マーケットインだけ」で失敗する飲食店

マーケットインを素直に実行しようとする店がある。
例えば商品開発におけるマーケットインを例にしてみよう。

「流行っているメニューを取り入れる」
「SNSで映えている盛り付けを真似る」
「競合店と同じ価格帯、同じ構成にする」

これらは悪いことではない。 実際、一時的には売れることもあります。

だが、半年もすると、こうなることが多い。
「結局、どこにでもある店」。

私が見てきた中で、こういう店は本当に多く存在する。オープン時は話題になるけど、1年後には苦戦しているのです。

なぜだろうか。
それは、

マーケットインを「売れているものを作ること」「ニーズに合わせること」と誤解しているからだ。

これでは、市場に後追いで参加しているだけだ。
流行りのメニューを出す頃には、すでにそのブームは終わりかけている。
お客さまは「また同じか」と感じてしまう。

飲食店経営において重要なのは、「何が売れているか」ではない。
「なぜ売れているか」を構造で捉えることだ。

一時期 タピオカが売れたのは、タピオカが美味しかったからではないでしょう。(もしかしたらそれも多少はあるかもしれないが)
「手軽に持ち歩ける」「写真映えする」「友達と一緒に楽しめる」という体験が売れたのではないだろうか。

その構造を理解せずに、タピオカだけ真似ても意味がない。ということが言いたいのです。


「プロダクトアウトだけ」も危険な理由

では、プロダクトアウトはどうか。

「自分の得意料理を出す」
「本当に美味しいと思うものだけを提供する」
「原価も手間もかけて、こだわり抜く」

飲食において、これはこれで重要なことだ。
料理人としての誇りでもある。

だが、これだけだと、こうなる。
「いいものなんだけど、売れない」。

私自身、こういう店も何度も見てきました。
味は本物。素材も一流。だけど、お客さまが来ない。

なぜだろうか。
それは、

市場性とニーズの検証がないプロダクトアウトは、趣味になってしまうからだ。

飲食店のメニューは芸術ではありません。ビジネスなのです。
そしてビジネスである以上、答えなければならない問いがあります。
それは、

「誰が買うのか」
「どんなシーンで食べるのか」
「いくらなら払うのか」
「なぜ、他の店ではなく自分の店を選ぶのか」

この問いに答えられない商品は、どれだけ完成度が高くても、広がらない。
美味しいものを作れば売れる時代は、とっくに終わっているのです。


マーケットインの本質は「売れるロジックを先につくること」

ここからは、私なりの定義を置きたい。

マーケットインとは、「売れるものを作ること」ではない。
売れるロジックを、商品を作る前に まずつくること」です。

具体的に言うと、こういうこと。

「誰の、どんな欲求を満たすのか」
「どんな文脈で、その商品が選ばれるのか」
「競合と何が違うのか」
「なぜ、自分がそれをやる意味があるのか」

この4つをメニューを開発する前に言語化できている状態。
これが、飲食業におけるマーケットインだと私は捉えている。

たとえば、ランチの新メニューを考えるとき。
「サラダボウルが流行っているから出そう」ではないということ。

マーケットインとは、
「このエリアには、30代の働く女性が多い。彼女たちは、限られた昼休みの中で、罪悪感なく食べられて、午後の仕事に差し支えないランチを求めている。近隣にそれを満たす店がない。だから、うちはそこを狙う」

ここまで言語化できていれば、サラダボウルでもパワーサラダでも、具体的なメニューは後から調整できる。

逆に、このロジックがないまま作った商品は、
どれだけ改良しても売上が安定しない結果を生むことが多いのです。


プロダクトアウトは「勝つための武器」

はい、マーケットインが必要なのはわかりました。
では、プロダクトアウトは不要なのか。

答えは、明確にNOです。

プロダクトアウトは、マーケットインを実現するための武器です。
マーケットインで「どこで戦うか」を決めたら、次に必要なのは「その戦場で勝つ手段」。つまり、それがプロダクトアウトな思考というわけだ。

「自分は何が作れるのか」
「何になら、時間と情熱をかけられるのか」
「どの領域なら、他の誰よりも深く掘れるのか」

これがプロダクトアウトの役割だ。
つまり、マーケットインとプロダクトアウトは、こういう関係になる。

マーケットイン = どこで戦うかを決める思考
プロダクトアウト = その戦場で勝つための手段

戦う場所を間違えたら、どんな武器も役に立たない。
だが、武器がなければ、正しい場所にいても勝てない。

まさに両方が必要なのです。


飛行機の両翼として考える

私の結論を言いましょう。

マーケットインとプロダクトアウトは、どちらが正しいかの話ではないのです。この2つはまさに 飛行機の両翼 です。

マーケットインが欠ければ、方向が定まらない。
プロダクトアウトが欠ければ、推進力がない。

片方の翼だけで飛ぼうとしても、墜落するだけ。
ただし、一つだけ付け加えましょう。

「売れること」を目的とするなら、主軸はマーケットインに置くべき。ということ。

なぜなら、市場を理解せずに飛び立とうとすることは、離陸できない飛行機と同じだから。

まず、どこに向かうかを決める。
その上で、自分の強みを武器にして飛ぶ。

この順番を間違えると、どれだけ頑張っても成果が出ないのです。


迷ったときの3つの判断基準

最後に、実務で使える判断基準を置いておこう。
もしあなたが新商品やメニューを考えるとき、この3つを自問してほしい。

1. これは「誰の、どんな課題」を解決しているか

お客さまの顔が浮かぶか。その人が抱えている不満や欲求を、具体的に言葉にできるか。

2. その市場に、今もお金は動いているか

理想論ではなく、実際にお金を払う人がいるか。競合がいるなら、それは市場がある証拠でもある。

3. その上で、これは「自分だから」できるか

自分の経験、技術、想いが活きるか。他の誰かがやるより、自分がやる意味があるか。

この3つすべてにYESと言えるなら、それはマーケットインであり、同時にプロダクトアウトでもある。

まさに両翼が揃った状態です。

迷ったときは、この3つに立ち戻ってほしい。
答えは、必ずそこにあると、私は思っています。

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西平タイジ

35年間で上場2社。他に200店舗以上の業績を上げた専門家として仕事しています。 上場2社の多店舗展開に携わり、飲食・美容・整体・小売などが専門。Notionが大好きです。 脳科学×行動科学からのアプローチで、たまに趣味のゴルフを語ります。

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