冷凍商品OEMの始め方
商品企画から販売までの全手順と失敗しない進め方
1. 冷凍商品OEMとは何かを正しく理解する
冷凍商品OEMとは、自社ブランドの冷凍食品を外部の工場に製造委託する仕組みです。OEMは「Original Equipment Manufacturer」の略で、発注者のブランド名で製品を製造する形態を指します。
冷凍OEMを正しく理解するには、OEM工場がやる範囲と自分がやる範囲を明確に分ける必要があります。この境界線を誤解すると、必ず失敗します。
OEM工場がやる範囲
① 原材料の調達(指定がある場合は発注者指定の材料を使用)
② 製造工程の実行(加熱、成形、冷凍処理など)
③ 品質管理と衛生管理
④ 包装作業(発注者が用意したパッケージへの充填)
⑤ 製造記録の保管と報告
自分がやる範囲
① 商品コンセプトの設計
② ターゲット顧客の設定
③ 販路の確保
④ 価格設定
⑤ パッケージデザインの作成
⑥ 食品表示の作成と確認
⑦ 物流の手配
⑧ 販売とマーケティング
【ここを誤解すると失敗する】
OEM工場は「製造」を代行するだけです。商品設計、販売戦略、物流設計は発注者の責任です。「工場に任せれば商品ができる」という認識は完全な誤りです。工場はレシピ開発も販路開拓もしません。OEMとは製造の外注であり、ビジネス全体の外注ではありません。
2. 商品コンセプトを味ではなく売り方から決める
味から考えるのは失敗パターンです。
多くの初心者は「美味しい餃子を作りたい」「こだわりの唐揚げを商品化したい」という発想から始めます。これは失敗する順序です。冷凍OEMで成功するには、味より先に「誰に」「どこで」「いくらで」売るかを決める必要があります。
理由は単純です。味はいくらでも調整できますが、ターゲットと販路と価格は後から変更しにくいからです。原価構造、パッケージ設計、物流設計がすべて販売設計に依存します。
具体例で比較する
「例① 高タンパク冷凍餃子」
「ターゲット」:筋トレをしている20〜40代男性
「販路」:フィットネスジムの物販、自社EC、Amazon
「価格」:1食(5個入り)600〜800円
「コンセプトの意味」:このターゲットは価格より栄養成分を重視します。1食あたりタンパク質30g以上という具体的な数値が購買動機になります。ECでの販売が中心になるため、送料を含めた価格設計が必要になります。
「例② 家族向け冷凍唐揚げ」
「ターゲット」:30〜40代の共働き夫婦、子どもがいる家庭
「販路」:スーパーマーケット、生協、ふるさと納税
「価格」:500g入り 980〜1,280円
「コンセプトの意味」:このターゲットは価格と量のバランスを重視します。家族4人で食べられる量が必要であり、単価よりも「1人あたりいくらか」で判断されます。スーパーで売る場合は棚での視認性とパッケージサイズの制約が生じます。
この順序で決める
① ターゲット顧客を具体的に定義する(年齢、性別、ライフスタイル、購買動機)
② 販路を決める(EC、小売店、卸、ふるさと納税など)
③ 販売価格を決める(販路ごとの相場と顧客の支払意思額を調査)
④ 逆算して目標原価を決める
⑤ 目標原価内で実現できる味と仕様を設計する
この順序を守ることで、「美味しいけど売れない」「作ったけど販路がない」という失敗を防げます。
3. OEM工場を探す正しい方法
OEM工場を探す方法は主に4つあります。それぞれの特徴と使い分けを解説します。
① マッチングサイト
食品OEM専門のマッチングサイトが複数存在します。「食品OEM.com」「OEM TOWN」「食品開発OEM.jp」などが代表的です。メリットは、一度に複数の工場に問い合わせができること、工場側もOEM案件を求めているため話が早いことです。デメリットは、手数料が発生する場合があること、競合も同じ工場を使う可能性があることです。
② 展示会
「FOODEX JAPAN」「食品開発展」「冷凍食品EXPO」などの展示会に参加する方法です。工場の担当者と直接話せるため、技術力や対応力を判断しやすいです。サンプルを見たり試食したりできるのも利点です。年に数回しか開催されないため、スケジュールを確認して参加する必要があります。
③ 商工会議所
地元の商工会議所や産業振興センターに相談する方法です。地域の食品製造業者を紹介してもらえる場合があります。特に地方で小ロットから始めたい場合は有効です。公的機関経由のため信頼性が高いです。ただし、紹介できる工場の数は限られます。
④ 直接問い合わせ
目当ての商品ジャンルを製造している工場を検索し、直接問い合わせる方法です。「冷凍餃子 OEM」「冷凍食品 製造委託」などで検索すると、OEM対応を明記している工場が見つかります。競合他社の製造元を調べて問い合わせる方法もあります(パッケージの製造者欄を確認)。
問い合わせ時に伝えるべき4項目
工場への最初の問い合わせで、以下の4項目を必ず伝えます。これがないと工場側は見積もりも判断もできません。
「項目①」商品の概要
例文:「1食あたりタンパク質30g以上の冷凍餃子を開発したい。皮は薄め、具材は鶏むね肉を中心に使用し、1パック5個入りを想定している。」
「項目②」想定ロット数
例文:「初回は1,000パックから開始し、月間3,000パック程度まで拡大したい。」
「項目③」希望納品形態
例文:「個包装で納品してほしい。パッケージは当方で用意する。冷凍倉庫への直送が可能か確認したい。」
「項目④」希望スケジュール
例文:「試作を2ヶ月以内に完了し、4ヶ月後の販売開始を目指している。対応可能なスケジュールを教えてほしい。」
これら4項目が揃っていれば、工場側は対応可否と概算見積もりを回答できます。曖昧な問い合わせは返信が遅れるか、断られる原因になります。
4. 試作依頼で失敗しないポイント
試作は味見ではありません。
多くの初心者は試作サンプルを受け取ると「美味しいかどうか」だけで判断します。これは間違いです。試作の目的は、量産可能な商品として成立するかを検証することにあります。
試作で評価すべき3つの基準
「基準① 再現性」
同じ品質の商品を繰り返し作れるかを確認します。試作1回目と2回目で味や食感にブレがないかを比較します。手作りでは再現できる味も、工場の製造ラインでは再現できないことがあります。試作は最低2回以上依頼し、品質のブレを確認します。
「基準② 製造安定性」
大量生産した場合に品質が安定するかを確認します。工場に対して、製造上の懸念点がないかを必ず質問します。「この配合は製造ラインで詰まりやすい」「この具材は冷凍時に食感が変わる」といった情報は工場しか持っていません。
「基準③ 原価ブレ」
試作時の原価と量産時の原価が乖離しないかを確認します。試作は少量のため単価が高くなります。量産時の原価見込みを書面で確認しておきます。「試作では原価300円だったが、量産したら350円になった」という事態を防ぎます。
失敗例:手作りでは美味しいが量産不可
ある事業者が、飲食店で人気だった手作り餃子をOEMで商品化しようとしました。試作を依頼したところ、工場から「この包み方は機械では再現できない」「この具材の配合は製造ラインで均一に混ざらない」という回答がありました。レシピを大幅に変更する必要が生じ、結果的に飲食店の味とは別物になりました。
この失敗を防ぐには、試作前に工場へ「機械製造で対応できる仕様の範囲」を確認しておく必要があります。手作りの完全再現ではなく、量産可能な形での商品設計が求められます。
5. 原価計算の考え方
冷凍OEMの原価は、食材費だけで計算してはいけません。原価を構成する5つの要素を把握し、販売価格から逆算して設計する必要があります。
原価を構成する5つの要素
「① 食材費」
原材料の仕入れ価格です。肉、野菜、調味料など、商品に使用するすべての材料費を含みます。季節変動や市場価格の影響を受けるため、余裕を持った設計が必要です。
「② 加工費」
工場での製造にかかる費用です。人件費、設備稼働費、光熱費などが含まれます。ロット数が少ないほど1個あたりの加工費は高くなります。工場によって加工費の算出方法が異なるため、見積もり時に内訳を確認します。
「③ 包材費」
パッケージ、トレー、ラベル、段ボールなどの費用です。デザイン性の高いパッケージは単価が上がります。包材にも最低ロットがあり、少量生産では包材費が割高になります。
「④ 保管費」
冷凍倉庫での保管にかかる費用です。常温商品と異なり、冷凍商品は保管費が高いです。パレット単位での課金が一般的であり、少量在庫でも一定の固定費が発生します。
「⑤ 物流費」
工場から倉庫、倉庫から顧客への配送費用です。冷凍便は常温便の1.5〜2倍の送料がかかります。配送エリアや個口数によって大きく変動します。
販売価格から逆算する流れ
以下の数値例で原価設計の流れを説明します。
「設定条件」
・販売価格:1,000円(税込)
・販路:自社EC
・想定粗利率:50%
「逆算の手順」
① 販売価格1,000円 × 粗利率50% = 許容原価500円
② 許容原価500円から各費目を配分する
・食材費:200円(40%)
・加工費:120円(24%)
・包材費:80円(16%)
・保管費:30円(6%)
・物流費:70円(14%)
③ この配分で製造可能かを工場に確認する
粗利率50%は最低ラインです。販促費、決済手数料、返品対応などを考慮すると、粗利率が低いと赤字になります。初心者は粗利率60%以上を目標に設計することを推奨します。
6. パッケージと食品表示の落とし穴
パッケージと食品表示は、初心者が最も失敗しやすい領域です。失敗すると印刷物の廃棄や販売延期につながるため、慎重に進める必要があります。
よくある失敗①:表示を後回しにする
パッケージデザインを先に完成させ、食品表示は後から考えるパターンです。食品表示は法律で記載項目と表記方法が定められています。原材料名、アレルギー表示、栄養成分表示などは、工場から提供される情報がなければ作成できません。
デザインを先に進めると、表示欄のスペースが足りない、文字サイズが規定を満たさない、といった問題が発生します。食品表示の内容が確定してからデザインを進める必要があります。
よくある失敗②:デザイン先行で印刷する
食品表示の確認を待たずにパッケージを印刷してしまうパターンです。食品表示には正確性が求められます。原材料の原産地が変わった、添加物の表記方法が間違っていた、栄養成分の数値が実測と異なっていた、といった修正が発生する可能性があります。
印刷後に修正が必要になると、印刷物を廃棄することになります。包材の最低ロットが1万枚の場合、すべて無駄になります。
【印刷前にOEM確認必須】
パッケージの印刷前に、以下の項目をOEM工場に確認します。
① 原材料名と配合順序
② アレルギー物質の有無と表記
③ 栄養成分表示の数値(実測または計算値)
④ 製造者または製造所の表記方法
⑤ 賞味期限の設定と表示方法
工場によっては、表示案を作成してくれる場合もあります。最終確認は発注者の責任ですが、工場の協力を得ることで誤表示のリスクを減らせます。
7. 冷凍商品の物流設計
冷凍商品の物流は、常温商品とは根本的に異なります。コスト構造とリスクを理解せずに販売を開始すると、確実に赤字になります。
常温商品との違い
「違い① 冷凍保管費」
冷凍倉庫の保管費は常温倉庫の2〜3倍です。マイナス18度以下を維持するための電力コストが上乗せされます。保管は通常パレット単位で契約し、少量でも最低料金が発生します。1パレットあたり月額1万〜2万円が相場です。
「違い② 送料上昇」
冷凍便の送料は常温便の1.5〜2倍です。60サイズの荷物を関東から関西に送る場合、常温便なら800〜1,000円程度ですが、冷凍便は1,200〜1,500円程度になります。送料を商品価格に転嫁するか、送料込みの価格設定にするかで利益構造が変わります。
「違い③ 事故リスク」
配送中の温度管理が崩れると商品が廃棄になります。冷凍庫から出して常温で放置された、配送車両の冷凍機能が故障した、受取人が不在で持ち戻りになった、といったケースで温度上昇が発生します。溶けた商品は再冷凍しても品質が劣化するため、返金や再送が必要になります。
【ここを計算しないと赤字】
具体的な数値で説明します。1個1,000円の冷凍商品を販売する場合の物流コストを試算します。
・冷凍便送料:1,200円(関東→関西)
・保管費按分:50円(月間1,000個出荷、パレット保管費5万円の場合)
・梱包資材:100円(保冷剤、緩衝材込み)
・物流合計:1,350円
商品価格1,000円に対して物流費1,350円では、送料無料にすると完全に赤字です。送料別で設定するか、商品価格を上げるか、物流コストを下げる工夫が必要になります。
8. 販売開始前のテスト販売
いきなり大量生産は危険です。
OEM工場には最低ロットがあります。1,000個、3,000個といった単位での発注が求められます。しかし、需要が読めない段階で大量生産すると、在庫を抱えるリスクが高いです。テスト販売で需要を検証してから本格生産に移行します。
テスト販売の方法
「方法① クラウドファンディング」
MakuakeやCAMPFIREなどのプラットフォームで先行販売する方法です。実際に購入する顧客がいるかを検証できます。支援金額が目標に達しなければ製造しないという判断もできます。商品の反応を見ながらリターンの内容を調整できます。手数料は売上の10〜20%程度です。
「方法② 予約販売」
自社ECサイトやSNSで予約を受け付ける方法です。「◯月発売予定、先行予約受付中」という形で募集し、一定数の予約が集まったら製造を開始します。予約数が少なければ、発売延期または中止の判断ができます。顧客のメールアドレスを取得できるため、発売後のリピート促進にも活用できます。
「方法③ 小ロットEC」
最小ロットで製造し、少量からECで販売を開始する方法です。在庫リスクは発生しますが、実際の販売データが取得できます。売れ行きを見ながら次回の製造数を調整できます。初回は赤字覚悟で市場の反応を見るという割り切りが必要です。
テスト販売の段階で以下のデータを収集します。
① 購入者の属性(年齢、性別、地域)
② 購入単価と購入個数
③ リピート率
④ 顧客からのフィードバック(味、量、価格への評価)
これらのデータをもとに、本格生産時の製造数とマーケティング戦略を決定します。
9. 初心者が必ずつまずくポイント
冷凍OEMに初めて取り組む事業者が、共通してつまずくポイントが4つあります。事前に把握しておくことで回避できます。
「つまずきポイント① 最低ロット」
OEM工場には最低ロットがあります。「100個から作りたい」と相談しても、対応できる工場は限られます。1,000個、3,000個、5,000個といった単位が一般的です。最低ロットが大きい工場ほど単価は安くなる傾向があります。小ロット対応の工場は単価が高いです。自社の販売力と資金力に合った工場を選ぶ必要があります。
「つまずきポイント② 原価の高さ」
試算段階では利益が出ると思っていたが、実際に見積もりを取ると原価が高く、利益が出ないことが判明するケースが多いです。特に包材費と物流費を軽視していると、想定原価を大幅に超えます。見積もりは早い段階で取得し、原価構造を確定させることが重要です。
「つまずきポイント③ 味より設計の重要性」
「美味しい商品を作れば売れる」という思い込みは危険です。冷凍食品市場には、大手メーカーが低価格で高品質な商品を大量に投入しています。味だけで差別化することは困難です。誰に、何の価値を、いくらで提供するかという設計が、味よりも重要です。
「つまずきポイント④ 物流費赤字」
送料無料が当たり前になった現在、冷凍商品の物流費は大きな負担になります。1個あたり1,000〜1,500円の送料を商品価格に転嫁するか、まとめ買いを促進するか、送料別で販売するか、戦略を明確にする必要があります。物流費を計算せずに価格設定すると、売れば売るほど赤字になります。
10. まとめ
本記事で解説した内容を整理します。
① 冷凍OEMでは、工場は製造を担当し、商品設計・販売・物流は発注者が担当する
② 商品コンセプトは、味ではなくターゲット・販路・価格から先に決める
③ 工場探しは、マッチングサイト、展示会、商工会議所、直接問い合わせの4つの方法がある
④ 試作では、再現性・製造安定性・原価ブレの3点を評価する
⑤ 原価は、食材費・加工費・包材費・保管費・物流費の5要素で構成される
⑥ パッケージ印刷前に、食品表示の内容をOEM工場に確認する
⑦ 冷凍物流は、保管費・送料・事故リスクが常温商品より高い
⑧ 本格生産前に、クラウドファンディングや予約販売でテストする
⑨ 最低ロット、原価、味より設計、物流費の4点で初心者はつまずく
OEM工場への問い合わせは、商品概要、想定ロット数、希望納品形態、希望スケジュールの4項目を明記して行います。これが揃っていれば、工場は具体的な回答ができます。
冷凍OEMは製造ビジネスではなく設計ビジネスです。
工場に製造を委託するのは、ビジネス全体のごく一部です。商品を設計し、売り方を設計し、物流を設計し、収益構造を設計します。この設計力が成功と失敗を分けます。本記事の内容を参考に、設計から始めてください。

